マンションにプロ用の防音室!一流ホルン奏者のお客さまの事例
マンションやアパート、戸建て住宅、店舗、スタジオ、ライブハウスなどの防音室設計・施工を手掛けているリズム・スターです。
防音室の設計は、その目的や用途によって考え方やプロセスが大きく変わってきます。特にクラシックの楽器演奏のための防音室設計では、ただ音が漏れないようにするだけではなく、音の響き方や残響時間などを考えて、音響設計を含めて防音室設計をしなくてはなりません。
楽器によって音の性質は異なりますし、強調したい音域や音色も違います。
さらに、演奏家の好みもあるので、防音室設計は完全にオーダーメイドにならざるを得ません。しかし、それが逆に防音室設計の醍醐味でもあります。
今回のご依頼は、数々の一流オーケストラに所属されていた音楽家の練習環境のための防音室設計でした。
首都圏のマンションの一室ということで、近隣への音漏れがないように高い遮音性能が求められた工事でした。
工事の内容やこだわりポイントなどをリズムスター代表の田中が解説し、さらには防音室を毎日実際に使っているオーナーさまからの感想もいただきました。ぜひ最後までお読みください!
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マンションに建築した防音室の中を見てみよう!代表田中による解説!
―今回のマンションでの防音室はどのようなご依頼でしたか?
プロのホルン奏者の方からのご依頼で、マンションの一室にホルンを練習するための防音室をつくることになりました。
マンションを購入され、リノベーションで防音室をつくりました。
元々のお部屋は6畳ほどのクローゼットがついた洋室になります。防音工事をするために部屋の内装仕上げ材は全て撤去し、一旦スケルトンにしてから工事を始めました。
金管楽器の中でもホルンは特に音が大きいことで知られており、最大音量はサックスやトランペットと同等の110デシベル以上になります。
しかも、依頼者さまはアマチュアのホルン奏者ではなく、日本でも有数の一流オーケストラに所属されていたこともあるプロのホルン奏者になるので、音圧も相当なものです。
練習は毎日のようにされるわけですが、時には練習が夜中にまで及ぶこともあるでしょう。マンションの一室ということもあって、とにかく防音室の遮音性能を高めることが課題でした。マンションの場合は前後左右に住戸が接していますから、近隣からの苦情が一番の懸念点でした。
―工事内容を詳しくお聞かせください!
防音
必要な遮音性能を測定するために、大学の施設まで行ってシミュレートしました。
リズムスターで保有している音源データと依頼者さまの音源をもとにして遮音性能を測定し、それをもとに設計していく作業になります。
何デシベルの音を出したら、何デシベル漏れるのか計算し、天井・壁・床に必要な遮音度を算出しました。
そして、床を浮床にして防振工事も行いました。部屋で飛び跳ねても、廊下には全く振動が伝わらないですよ(笑)。
壁の防音にいくら注力しても、床が防振できていないと部屋全体としての遮音を実現できません。今回は壁と床の両方から遮音性能を高めたので、マンションの共用廊下にいても全く音を出していることに気付かないほどの遮音性を実現できました。
防振床
音響
ホルンは中高音域を担う楽器なので、ややデッド気味(響きを吸収する)が良いとされています。そこで天井近くに吸音層を設けました。
また、普通の壁だと音が反射してエコーがかかってしまうので、調音パネルを追加するなどしてエコーがかからないようにしました。
しかし、デッド気味の音響では演奏者が疲れてしまうという問題もあります。
そこで、既存のクローゼットを生かして、音響調整のために中にカーテンを設置するなどして演奏時に自分で開閉して音の吸収を調整できるようにしておきました。
カーテンを開けると中の空気層が音を吸収するので響きが落ち着きます。逆に閉めると反射をするので音の印象が変わりますね。
完成時にはクローゼットの中には何もなかったのですが物が入ってくることによって物が吸音するので、また部屋の中の音響が変わってきます。
荷物とカーテンの両方で音響調節ができるようにして、演奏者自身がもっともストレスのない環境を自分でつくることができるようにしました。
―今回のマンションでの防音室工事で、特にこだわった部分はありますか?
高遮音を実現するには、お金をかけてあらゆる遮音工事を施せばいいわけですが、予算には当然のように上限があるので、湯水のようにお金が使えるわけではありません。
そこで、限られた予算内で最大限の遮音性能を発揮させるためにはどうしたら良いのか、オーナーさんとも相談しながらいろいろと考えました。
例えば防音室は機密性が高いので、室内換気を十分に行うために換気扇を設置しますが、その際に換気扇の出口が直接外部に面してしまうと音まで一緒に漏れてしまいます。
換気扇
そこで音が漏れないように、まずは防音室から家の廊下へ換気口を設け、さらに家の廊下から外へと換気口を設けるという間接換気にしました。
このようにすれば、音が直接外へ漏れることもないので遮音性を確保できますし、防音室の壁に外部に通じる穴をわざわざ開ける必要もないので格段に工事をしやすくなりコストも削減できます。
―なるほど、防音工事は本当に奥深いですね。では次に、実際にオーナー様から今回の工事についてお話を伺います。
マンションの防音室建築を依頼したオーナーさまに、お話を伺いました!
―ご依頼するに至った経緯を教えてください
防音室をつくりたいと周囲に話していたところ、友人からリズムスターを紹介されました。
そこでどのような会社かホームページをみたのですが、専門性が高く実績もしっかりしていたので、ここなら大丈夫そうだなと感じました。
実際に田中さんにお会いすると、本人も楽器をやっているとのことで話が通じやすく、こちらの細かい意向も工事にきちんと反映させてくれそうだなと思いました。
楽器の音色は繊細なので、ただ音を漏れないようにするための防音工事ではなく、音響のこともしっかり考えた音響設計ありきの防音工事になってきます。
なので、やはり音楽のことをわかっている方ではないとなかなか難しいかと思うのですが、その点に関しては田中さんはわかっているので、安心して工事をお願いすることができました。
―マンションの一室に防音室を、ということで、大変だったことはありますか?
まず、防音工事自体をしてよいのかどうかマンションに確認を取るのに時間がかかりましたね。
管理組合の許可を取ったり、周囲の住戸を回って工事概要を説明したりして、時間をかけて理解してもらいました。騒音問題はマンションのトラブルの中でも特に多く聞かれることなので、こちらとしても遮音性能には最大限に配慮しました。
そもそも楽器演奏が禁止の物件ではないのですが、常識的な判断は必要です。
何時までならよいのか、どの程度の音であれば許容範囲なのかなどは、個人によって感覚が違いますからこちらの思い込みだけで判断しないようにしました。
工事の説明をして回る際には、「練習は21時までにします」ということで理解をいただきました。何しろ全く音が漏れていないので、私がいつ練習しているかわからないと思います。
外からは全く聞こえない
―防音室の工事を進める中で、印象的だったことは?
今回の防音室工事は諸事情により住みながらの工事となりました。最初は落ち着かないかなと思ったのですが、逆に毎日のように工事のプロセスを見ることができて面白かったです。
床や壁、天井までがむき出しの状態から見ているので、仕上がった中がどのようになっているのかわかるのは安心ですね。
防音室がつくられていく過程がわかったのは貴重な体験です。工事を見ている限り、実際に手を動かしながらフレキシブルにつくっているような印象を受けました。
設計図はもちろんあると思うのですが、何しろ音のことなので、ふたを開けて初めてわかることもあるかと思います。
私は演奏家なので音の響きや音色については違いがわかるのですが、その音響設計についてはわからないので、その辺は田中さんにお任せしていました。
―防音室の仕上がりには満足していますか?
クローゼットの開け閉めによって音響が調整できるようにするなどは、さすが田中さんだなと思いました。
音は室内環境のちょっとした変化によっても響きが変わってきます。
この部屋には彫刻が置いてありますが、彫刻の形や大きさ、位置も音に影響していますし、今日のように複数の人が室内にいることでも音の響きは大きく変わります。
先ほどあらためてホルンを吹いて見たのですが、クローゼットを開けた状態にすると中の空気層が音を吸収してしまうので、音が跳ね返ってくれない分、余計に力を入れて吹かないといけないことがわかりました。
しかし閉じて吹いてみると、いい感じに反射してくれたので、ストレスなく演奏することができました。
もちろん奏でる音によってもどの音を強調したいのかが変わってくると思うので、吸音させたいのか、反射させたいのかで都度仕様を変えてベストな状態を見つければいいと思います。
遮音性能については全く問題ないです。
高遮音にしていただいたので、気兼ねなく練習できるのはいいですね。弦楽器の方が練習したいという事で使用した事がありました。
音漏れのチェックをするために共用廊下に立ってもらって演奏したことがあるのですが、ほとんど聞こえないと言っていました。
マンションなので、音漏れだけはしないように気を付けていたのですが、全くその心配はありませんでしたね。正直、ここまでの遮音性能になるとは思ってなかったので、練習環境が整い、リズムスターさんにお願いして本当によかったと思っています。
―こちらとしても嬉しいお言葉です!今日はありがとうございました
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