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費用をかけずに騒音問題を解決!分譲マンション上下階でのトラブル事例


リズムスターは防音室の設計・施工を専門とした、東京の内装工事会社です。
防音工事、騒音対策は「防音室」をつくる事が全てではありません。
日本全国からご相談をいただき、戸建て住宅やマンション、ライブハウス、ダンススタジオ、宿泊施設などでの実績。問題解決の方法をお客さまと一緒に模索しています。

巷で起こる騒音問題の原因はケースによって様々ですが、騒音対策と言えば、お金をかける“防音工事”や、そもそも問題解決をあきらめる“引っ越し”が選択肢にでてくることもあるかと思います。

そこで今回は、階下の住人の騒音に悩まされていたご夫婦のケースを、回顧録という形でご紹介します。

無事、問題解決に至ったこの事例を通して、“費用をかけない騒音対策”があることを知っていただけましたら幸いです。

※弊社は防音室の設計施工を行っていますが、防音室をつくる会社ではなく、騒音問題を解決する会社です。ご家庭での一番の防音対策は「ご近所付き合い」であると長年提唱しています。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
まさか夜にカラオケ?階下の住人の行動

ある時、弊社のWebサイトに問い合わせのメールが来ていました。
内容は、下の階に住んでいる人が夜な夜なカラオケをしていて、その音がうるさいため、自分の寝室を防音にしたいとのこと。

その時に感じたのは、「なぜ被害者が自分でお金を出して防音工事をしなければいけないのか」ということです。

そもそも騒音問題であれば、マンションの管理組合に事情を話して、下の階の人に注意してもらうとか、他の方法もあるはずですから。

それにもかかわらず、「自腹を切ってでも早く騒音問題を解決したい」というのは精神的にかなり追い込まれている状態だと、何か深い理由があるように感じられました。
そこで詳細を聞くため、ご自宅へ伺うことにしたのです。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
管理組合に相談するも解決できず、不信感が募る

騒音問題に悩み、問い合わせのメールを送ってきたのは関東にお住まいの70代のご夫婦。
ご主人は一流商社で定年まで勤め上げ、退職後に分譲マンションを中古で購入。リフォーム後に入居したそうです。

そのお部屋は、見晴らしが最高なマンションの高層階。
見晴らしが良く、カーテンを開ければ澄んだ青空が眼前に広がるので、遊びに来た家族やお孫さん、友人が目を輝かせながら窓際に駆け寄る姿が容易に想像できました。
そのために購入されたのだろうと、お二人が描いていた憧れを想像しました。

さて、問題の騒音ですが、約一年前から続いていて「ずっと我慢していた」とのこと。
かつて、管理組合に話をしたところ、理事長が「どれくらいの騒音なのか確認したい」と言って、夜に来てくれたそうですが、その日に限って騒音は皆無。
しかし、理事長が帰った後すぐに騒音が鳴り始めたことで、ご主人は「理事長と下の階の住人がつながっているのでは?」と疑念を持ってしまったと。

実は、下の階に住んでいるのは管理組合の”元”理事長。
元理事長と現理事長は組合の業務などを通して緊密なやり取りをしていただろうから、きっと“ツーカーの仲”。騒音チェックに行くのを事前に教えていても不思議ではない、とご主人は考えていました。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
振動にも悩まされ、奥さまは家で寝泊まりできない状態に

騒音は一時的に小さくなった時期もあり、ご主人が「(下の階の住人が)防音工事をしたのかも」と胸をなでおろしたのも束の間、今度は「ブーン」という低周波の音がするようになったとのこと。

ご主人や奥さまが部屋で立っていると足がしびれてくるほどで、夜はベッドで寝ていても背中に振動を感じるという話でした。

そうした騒音と振動が続くことで、奥さまは精神的に相当参ってしまった結果、近所にアパートを借り、そこで寝泊まりするようになったので余計なお金がかかることに……。
「僕は耐えられないほどではない」と言うご主人も、決してストレスが溜まらないわけではありません。

やがて、「どうしてこれくらい我慢できないんだ」と言うご主人と「こんな環境では生活できない」と言う奥さまとの間で衝突も多くなっていったそうなのです。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
弁護士に相談するも「裁判では勝てない」と突き放される

ご主人は知り合いの弁護士に相談したところ、「損害を立証できないと裁判に勝てない」と言われたそうです。
「この件では勝てないと思うので、どうしても耐えられないなら、売って引っ越した方がいい」とも言われたと。

ご主人は「人生最大の失敗はこのマンションの購入です」とおっしゃっていました…。リビングを広くするなど、見渡す限り、リフォーム費用は2000万円は下らないのではないかと推測できました。

高齢のご夫婦だけで暮らすには広すぎる間取りや、綺麗にリフォームされた部屋の中を見ると、お客さんを招く幸せな時間を思い描いて購入したのがひしひしと伝わってきました。

夏休みやお正月に、お子さんとお孫さんを招いて楽しく過ごしたいという夢が詰まった家であればなおさらのこと、そう簡単に売り払ったり、出て行ったりするわけにはいかないでしょう。

とはいえ、我慢にも限界があります。
奥さまよりは多少我慢できていたご主人にも、限界が訪れる瞬間があった模様。
ある時、あまりの騒音にイライラが頂点に達し、床を椅子で叩いて大きな音を出してしまったそうです。

その大きな音に驚いた向かいの部屋の住人が「どうしました?」と声をかけてきたので、「下の部屋がうるさいから、つい床を叩いてしまった」と伝えたところ、隣人にも警戒されてしまう結果に……。

以前は、トラブルが収まるように間を取り持とうとしてくれていた向かいの住人ですが、この出来事を機に距離を置くようになり、ご夫婦は孤立してしまいます。

「僕のことを頭のおかしい奴と思い、関わるのを止めたのでしょうね」とご主人は当時のことを寂しそうに振り返っていました。

管理会社、弁護士、向かいの住人も頼りにできず、最後の手段が「自腹を切ってでも防音対策をする」ということだったのでしょう。
ご夫婦の苦労や心の痛みがすごく伝わってきましたが、騒音や振動がどれほどのものなのか、実際に体感してみないと何とも言えません。

そこで空振りに終わらないように「次は泊まりがけで来ます」と伝え、後日改めて伺うことにしました。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
状況を確認するために張り込むが騒音・振動は確認できず

約束の日、通常業務を終えた後に騒音測定器などの準備を整え、ご夫婦の家に行ったのは夜の9時くらい。
騒音や振動を確認するまでは帰らないつもりで待ち構えましたが、いくら待っても階下からは騒音がしません。

すると、「下の住人は私たちの足音を確認しながら、二人がいる場所を狙って嫌がらせしているようだ」とご主人が言い出したのです。
要するに、どの部屋にご主人や奥さまがいるのか常に様子をうかがっており、今は客(※私のこと)が来ているのを話し声や足音で把握済みのはず。
だから、部外者がいる今は騒音を立てないようにしているのではないか、とご主人は疑心暗鬼になっていました。

「何か恨みがあるとしても、果たしてそこまでするだろうか」と、にわかには信じられない思いでしたが、奥さまが家で寝泊まりできないほど苦痛を感じているのも事実。
そうして騒音や振動が出るのを待つ間、ご主人は「実際の音を録ったものがあります」とボイスレコーダーを出してきて、同時に「○時○分○秒:○○の音」という記録がびっしり書かれたリストも見せてきました。

聞いてみると、確かに音が鳴っているのがわかります。
でも不思議なのは、マンションから約100~200メートル離れたところに線路が通っていて電車の音が部屋の中まで聞こえるのに、お二人はそれを騒音だとは感じていないのです。
正直、「どうして階下の音だけ、それほどまでに」と思いましたが、継続的に騒音が起きているのは間違いありません。

ご主人から「俺はまだ我慢できたのに、お前は……」と責められた奥さまが「何でも私のせいにするのね」と涙ぐむ場面もあり、お二人が精神的にギリギリの状態まで追い込まれているのがはっきり伝わってきました。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
防音工事は技術的に可能、でも心情的にはできない

ご主人は「もう防音工事をするしかない」と心に決めていたようですが、こちらとしては安易に「わかりました」とは言えません。
寝室やリビングにいても体がしびれるほどの振動があるということは、書斎やキッチンも含めて家のすべてをリフォームすることになるので、費用はかなりかかるはず。
その工事は「技術的には可能だけど、心情的にはできない」とお二人に話しました。

ご主人が望むように防音工事をするとしたら、2000万円から3000万円くらいの金額になっていたことでしょう。
仕事としてやる以上は会社の利益を考える必要がありますが、これほど心を痛めている人を前にして「儲かる、儲からない」を考えながら見積もりをつくることは無理。
そもそも、こんな悲しい形でお金をいただくことはできないと思ったのです。

悲しい気持ちや申し訳ない気持ちになる仕事よりも、楽しいと感じるものやお客さまが笑顔でいてくれる仕事の方がいいので、「この仕事はできません」と正直に伝えました。
お金をいただくのは心情的に無理だからといって無料でやるわけにもいかないので、「どうしてもやりたいのなら、他の業者に頼んでくださいませんか」と。

でも、お二人のことを突き放すつもりはありませんでした。
弊社の理念は「防音室を造ることではなくて、音の悩みを解決してあげること」。
なので、その理念に立ち返り、防音工事の他に解決策はないか、お二人と一緒に方法を探ることにしたのです。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
話を聞き進めるうちに騒音問題の真の原因が発覚!?

騒音問題の始まりをより正確に知るため、マンションの購入時期などについて詳しく聞いてみました。
すると、購入後に2ヶ月ほどかけてリフォーム工事を行っていたことがわかったのです。
工事の際には電動工具の音が鳴り響いたり、重い工具箱を床に置く音や作業員の足音が下の階に響いたりすることもあるでしょう。夏場など、窓を開けていたら、その音はいっそう聞こえてくるはず。

つまり、リフォーム工事をしていた2ヶ月間、下の階の住人はストレスを溜めていた可能性があります。もし、そうであれば「騒音問題の本当の原因はご夫婦にあった」とも考えられるのです。

夜にカラオケをしたり、わざと音や振動で嫌がらせをしたりするのは非常識ですが、その動機が“仕返し”だとしたら、きっかけをつくってしまったと捉えて、こちらから謝ることで解決に近づくはずだと思いました。

リフォームの際、階下の住人に挨拶をしたのか聞いてみたところ、「直接1回したけど、あとは業者にお任せしていた」とのこと。
リフォーム工事がどんな感じで行われていたのかも、あまり確認していないようでした。
マンション購入後、すぐリフォームに入り、完了後に入居したということは、他の住人とのコミュニケーションが十分に取れていたとは言えません。

入居後も他の住人と会った際に挨拶をすることはほとんどなかったようです。
つまり、リフォーム工事の騒音にさらされていた人がお二人に対して良くない印象を持っていても不思議ではない状況だったのです。

そこで、こちらから提案した解決策は「ご主人が折れること」。
自分よりもはるかに年上で社会経験も豊富な人に対して、あれこれ意見するのは生意気だと思いつつ、話をさせていただきました。

リフォーム工事の際に騒音被害を与えていた可能性があることを伝え、「入居前にご迷惑をおかけしたかもしれません」「初めてのリフォームのため配慮が足らず申し訳ありません」と謝ってみるのはどうか、と提案しました。

「自分が悪いとは思わなくても、ここはグッとこらえて、まずはこちらから頭を下げてみてはいかがでしょうか」と。
もし、直接言うのが難しければ、管理組合の理事長を通して伝えるというやり方もあるのではないか、と話したのです。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
ご主人の目には涙…そして、相手へ謝ることを決意

そうした話の流れで、ずっと感じていたことを思い切って聞いてみました。

「お盆やお正月にお子さん、お孫さんが遊びに来るのを楽しみにして、この家を購入したんですよね」と。
でも、騒音問題があるうちは招くことができないし、たとえ来ても楽しく過ごせない。
だったら、この問題を解決するために前向きに行動してみてはいかがでしょうか、と。
すると、ご主人は目に涙を浮かべていました。

「力不足かもしれませんが、何でも相談に乗ります」「謝るのはプライドが許さないかもしれませんが、お子さんやお孫さんのことを思えば、きっとできるはずです」と伝えたところ、ご理解いただけたのです。

その家にはご自身と奥さまの夢や思いがたくさん詰まっているのを思い出したのでしょう。
日々の騒音によるストレスが溜まり、「やられたらやり返せばいい」と物騒なことを口にするほど気持ちが荒ぶる瞬間もあったご主人ですが、最終的には納得してくれました。

「生意気なこと言ってすみませんでした」と頭を下げると、ご主人は「いえ、そんなことはないです。明日にでも理事長に連絡してみます」と笑顔を見せてくれたのです。
その言葉に安心してご夫婦の家を後にした時、時計の針は深夜の2時を回っていました。

費用をかけないマンションの騒音対策とは?
騒音問題は解決し、ご夫婦に平穏な生活が訪れる

2週間後、ご主人から現金書留が届き、「先日は親身になって話を聞いてくださり、ありがとうございました。車代の足しにもならないかもしれませんが……」という手紙と共に数枚の紙幣が入っていました。

すぐにお礼の電話をして、「その後、騒音はどうなりましたか?」と聞いたところ、「理事長を通して謝罪の気持ちを伝えたところ、ピタッと止まりました」との答えが。

何にしても、トラブルが解決したのは実にめでたいことです。
あれほど病んでいた奥さまも騒音のない生活に安心して、寝泊まり用に借りていたアパートを引き払い、戻ってくるという話でした。

これは以前から言い続けていることですが、一番の防音対策は“近所付き合い”です。
顔を合わせたら挨拶をする、気づかいを持って接する……。これが最も費用対効果の高い防音対策なのです。
だって、タダですから。

お金をかければ、いくらでも防音工事はできますが、お金をかけなくても騒音問題を解決できることがある。
今回のことが良い事例になったと言えるでしょう。

昔と比べて近所付き合いが希薄化している現代。特に賃貸住宅で暮らしている人は「隣にどんな人が住んでいるのかわからない」という場合も多いはずです。
でも、だからこそ、顔を合わせた際には挨拶をするなど、コミュニケーションを取ることが余計なトラブルを回避する第一歩になるのではないでしょうか。

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