【防音室】Dr-100は現実的に不可能です!
マンションやアパート、戸建て住宅、店舗、スタジオ、ライブハウスなどの防音室設計・施工を手掛けているリズム・スターです。
今回は、知っていて損はない……というより、知らなきゃマズい! 防音の基礎知識として「Dr値」について解説をしていきたいと思います。
ネット上にも間違った情報が沢山転がっているDrについて、解説の熱が入ります。
Dr-100が現実的に不可能な理由
【1】そもそもDrってなぁに?
防音室の性能を示すときに、「Dr」という言葉をよく聞きますが、そもそもDrとは何の数値を表す単位なのですか?
防音工事の性能を評価する時に使います。
Drを理解するには、以前私が解説した下記の動画が非常にわかりやすいと思います。
また、設計段階でも、理論上どの程度の遮音性能を発揮できるかを算出し、Drの性能評価を使ってお客さまに説明します。
Dr-100が現実的に不可能な理由
【2】dB(デシベル)とHz(ヘルツ)
楽器の音も、街中の騒音も、音の大きさをあらわすのはdB。
周波数が高いほど高音となり、低いほど低音になります。
Dr-100が現実的に不可能な理由
【3】Dr-100はそもそも測定不可能!
最近「Dr-100」についての記事をよく目にするのですが、「Dr-100」って物凄く遮音されるということですよね?
最初にそういう記事を読んだ時、「表記の間違い?」と思ったほどですが…
恐らく誇張広告の一種でそういうことを書いている記事があるのかもしれません。
これって、技術的には可能なのでしょうか?
仮にDr-100を実現しようとした場合について、解説してみました。
ジェット機のエンジン音に匹敵するレベルの大きさです。
ロックバンドの演奏音をスピーカーの目の前で聴くよりも大きな音になると思います。鼓膜が破れるレベルです。(笑)
そのような音を防音室で再現し、かつ部屋の外でどれくらい聴こえるのか/聴こえないのかを調べるというのは全く現実的ではありません。
Dr-100が現実的に不可能な理由
【4】異常にオーバースペック
逆に、防音室だけではなくライブハウスやスタジオのような施設にしても、そこまでの遮音性能が必要とされるような状況というのはほぼ無いと思います。
楽器で説明すると、
比較的音が大きいとされるドラムは120dB程度。
楽器に限らず音だけで言うと、落雷やジェット機の音が120〜130dBなので、140dBや150dBの音がいかに現実的でないかがわかりますよね。
6〜8畳の防音室で140dBの音を出したら、恐らく自分の鼓膜が破れます。(笑)
Dr-100が現実的に不可能な理由
【5】物理的な角度から考えてみると・・・
まず、Dr-100という性能がどういうことなのかを説明すると、Dr曲線グラフで125Hzの低音で85dB減衰させなければ、Dr-100とは言えません。
しかし…不自然の極み…というか、もはや建築の概念には当てはまらないシュールなものになってしまいます(笑)。
Dr値をあげるためには単に壁を厚くすればいいというものではなく、壁厚を倍にしたからといって、Dr値も倍になるわけではない。
Dr-100を目指すのであれば、それこそ壁厚が数メートルになってきます。壁の厚みが。(ものすごく堅牢なドアから入る…?)
おそらく、元は50畳の部屋が1畳くらいになってしまうでしょう。(笑)
あるいは壁圧の分厚いコンクリートで囲む。
あるいは、二重壁、三重壁にして空気層をつくるという工法もありますが、Dr-100を目指すとなるとこれも相当な重量になりますよ。
窓も二層、三層のものを使用すると思いますが、それをさらに何重にも重ねるので、合計で何枚になることやら。
部屋の中にまた部屋、また部屋……もはやマトリョーシカ状態です。
【6】まとめ:防音室設計は正しい調査から
ここまでのお話から、防音室設計でDr-100を目指すことは現実的ではないとわかりましたが、では、これから防音室を希望される方はどのくらいのDr値を目指せばよいのでしょうか。
余裕を持って高いDr値にしておくという方法もありますが、そもそも防音室はお金がかかる工事なので、オーバースペックにして必要以上に費用が高くなるのは避けたいですよね。
調査というのは音の調査のことですが、実際に楽器を演奏して、その音がどれくらいの大きさなのかを調べ、さらにどれくらいの音が部屋の外に漏れているのか正確に測定します。
例えば家がRC造であればそれほど音は漏れないので、もしかしたら簡易な防音工事で済むかもしれません。
逆に築年数の古い木造住宅などであれば、それほど音の大きくない楽器であっても音が筒抜けで、しっかりとした防音工事が必要かもしれません。まずは調査をして必要な遮音性能=Dr値を見極めて、それから工事計画を立てることが重要です。
防音室設計とは、調査結果から導き出される適正な遮音性能を持たせるための工事を提案していくことです。
私たちリズムスターはDr値という数値だけにとらわれず、諸条件を加味して最善の方法を提案しますので、防音室をお考えの方はお気軽にご相談ください。
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