マンションにガラス張りのグランドピアノ防音室!現役ピアニストのお客さま事例
マンションやアパート、戸建て住宅(木造にドラム防音室も可能!)、店舗、スタジオ、ライブハウスなどの防音室設計・施工を手掛けているリズム・スターです。
今回のご依頼は、現役のプロのピアニストであり、教育機関で後進の指導にもあたっていた谷村晴香さん(https://www.tanimuraharuka.com/)よりご相談いただいた、ご自宅にピアノ防音室をつくるプロジェクトでした。
こちらのピアノ防音室では、防音性能を満たすことと同時に、照明や建具などインテリアにもお客さまのこだわりを詰め込み、ピアニストとしての感性や美意識が反映されたデザイン性の高い空間を実現することができました。
防音工事に至るまでの経緯や、施工を終えて感じたことなどを谷村さんに伺いました。
またピアノ防音室工事の詳細についてリズムスター代表の田中が解説します!
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窮屈な「ピアノ防音室」ではなく、屋外までの繋がりを感じられる開放的な空間に!
―ご自宅にピアノ防音室をつくることになった経緯を教えてください
私は音大を出てから音楽の教員として勤めていました。
学生時代は防音賃貸に住んでいましたし、その後は職場に練習環境がありましたので、職場で練習ができるのであればと、防音賃貸は引き払って一般のマンションに引っ越したのです。
しかし、少し前に転職やライフスタイルが変化し、ピアノを気兼ねなく弾ける環境がなくなってしまったのです。
再び防音賃貸の物件に引っ越そうと探し始めたのですが、職場との兼ね合いや置きたいピアノのサイズなどを考えると、なかなか条件に合う物件が見つからず、時間ばかりが過ぎていました。家族とも相談した結果、いっそのことマンションを購入して防音室をつくろうという決断に至ったのです。
防音工事に関しては、私よりも母が熱心にネットなどで調べてくれて、その中で見つけたリズムスターさんにお願いしようと決めたのです。
防音室の工事を手掛けている会社は沢山あると思いますが、おそらく田中さんの豊富な音への知識や楽器への深い造詣、過去の施工実績などから、「ここだったら安心してお任せできる」と母も感じていたようです。
―ピアノ防音室の工事は、どのように進みましたか?
実際の工事に関する細かいことは私が直接やり取りさせていただきました。防音室をつくることは私にとって初めての経験なので、何をどこまでお願いできるものなのかもわからず、最初は手探り状態からスタートしました。
しかし、田中さんと気軽にLINEでコミュニケーションが取れたこと、そのやり取りを重ねる中で、音と建築への専門知識、また演奏者に対する理解も持っている方だとわかり、こちらも「きっと何を言っても受け止めてくれる」と、安心して工事の経過を見守ることができました。
―リズムスター田中さんとのコミュニケーションはスムーズでしたか?
もし楽器のことや音響のことなどを深く知らない方であれば、こちらが希望を伝えるのも一苦労だったのではないかと思います。
「このニュアンスはどう伝えたらいいのか…」など、悩んでいたかもしれません。
田中さんの場合は、楽器のことも音響のことも理解してくださっているので共通言語が持てて、私の普段通りの言葉でちゃんと伝わります。それがとても助かりました。
1つ伝えれば10わかっていただけるというか、とにかく細かいところまで説明しなくてもニュアンスを掴んでくださったので、意思の疎通が図れて安心できました。
―谷村さんが今回のピアノ防音室でこだわった点を教えてください。
防音室って、どうしても空間が狭く、閉鎖的な練習環境が多いのです。
長時間居ると息が詰まるというか、「練習しなきゃいけない…」という空気で。あまりポジティブな気持ちになれる雰囲気ではないのです。
そういった空間で長い間過ごしてきたので、自宅の防音室には「開放感」を求めました。
幸いにもこの部屋はバルコニーが広いので、
防音室からリビング、窓の向こうのバルコニー、その先の屋外までの、この抜け感をそのままにしたい!と思い、意識した造りにしていただきました。
もともと和室だった部屋を防音室にしたのですが、リビングとの間に壁がなく境界が曖昧なつくりでしたので、その特性を生かしました。
よくある防音扉で部屋を完全に区切るのではなく、引き違いのガラス戸にしたので、リビングからバルコニーまでの繋がりを感じられます。
少しブロンズがかったこのガラスと、照明がすごくステキで、夜になるとメロウな雰囲気も演出してくれます。防音室内の床は普通のフローリングではなくタイル調にしていただいたのでデザイン性が高く、演奏会のような感覚でピアノを演奏できます。とっても心地よいです。
田中さんも、防音室にガラス戸を使用したことはなかったそうで、かなりチャレンジングだったろうと思います。
初めてお会いしお打ち合わせをしたときには少々心配されていましたが、そこはさすがにプロですね!この造りにした場合、どの程度の遮音性能が出せるかを算出してくださり、結果的に心地よく演奏しても近隣にはピアノの音が聞こえない、開放感あるピアノ防音室を実現してくださいました。
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では、ここからは工事の詳しい概要について、リズムスターの田中が解説します!
マンションの和室をグランドピアノの防音室に!
谷村さまからのご依頼は、マンションの和室をピアノ防音室に変える防音工事と内装工事でした。
弊社に最初にお問い合わせいただいたのは谷村さんのお母さまだったのですが、工事の具体的な内容については実際にこちらで生活される谷村晴香さんご本人とのお打ち合わせで進めていきました。
もともとピアノの演奏は許可されている物件だったのですが、谷村さんはプロの演奏家ということもあり、練習量もそうですが音のエネルギーも趣味で演奏する方とは違います。
近隣の方々へご迷惑をおかけしないようにと、きちんと防音工事をしようというご判断だったようです。
音に関する問題は根が深くなってしまうことが少なくありませんので、谷村さんご家族は思いやりのある、本当に素晴らしいご判断をされたと思います。
ご予算の中で、優先すべきこと、後からでも手を加えられることなどを線引きしながら、性能が最大化するようご提案させていただきました。
ピアノ防音室とリビングの床の「縁を切る」
和室とリビングの仕切りが壁ではなく襖だったので、襖を撤去すると完全に一つの空間となるような造りでした。
通常であれば防音壁や防音ドアを設置するのですが、今回は谷村さんのご希望で、引き違いの素敵なガラス戸で空間を仕切ることにしました。
襖のラインが見切りとなっており、ピアノ防音室との境界になるのですが、こちらの物件は躯体のコンクリートに直接床を貼らずに支持脚の上に床材を貼っている「置き床」という構造になっています。
そこでリビングとピアノ防音室の間で床の下地を完全に切り離し、床の「縁が切れている」状態で振動が伝わらないようにしました。
また、物件内部での音漏れについてですが、
ピアノ防音室の一面は室内廊下と隣接していて、もう一面は洋室と隣接しています。物件内部ですので、本当は多少音が漏れても問題ないのですが、
今後お母さまやご家族が泊まりに来た時のことなどを考え、なるべくピアノの音が隣の部屋に漏れていかないように配慮し、遮音性能を持たせています。
ピアノのサイズに合わせた浮床構造
こちらのグランドピアノはヤマハのC3というシリーズで、350kgほど重量のあるグランドピアノです。ピアノの構造は内部の弦をハンマーで叩くことで音を出し、ピアノ本体に振動が発生します。
その振動が上下階やそのお隣、また隣接する世帯へ個体伝搬していきますので、床の防振は確実に行う必要がありました。
ピアノ防音室の方は浮床構造になっていて、工業用防振ゴムで支えられた防振架台となっています。以前からお伝えしているように、防振ゴムは何でも良いのではなく、C3のグランドピアノや演奏時に掛かる人間の重さ、この床にどれだけの荷重が掛かるかを全て計算して選定していきます。
共振周波数が10Hz前後になるよう床をつくっています。人間の耳は20Hz以下の音はほとんど感知できませんので、その低音は認識できません。
「物理的に音は発生していても聞こえない」という状態になります。
また、ピアノ防音室の方で飛び跳ねても「ドスンドスン」という振動はリビングの方には伝わりません。(当然、階下にも)
まぁ…日常でそれほど飛び跳ねることは無いと思いますが。(笑)
5mmのガラス戸が想像以上の遮音性能を発揮!
今回の防音工事の最大のポイントであり、私たちとしても初の試みだったのが、防音室の扉をガラス戸にしたことです。
このカッコいいガラス戸はフレームから谷村さんご自身がお選びになり、こちらとしては実績もデータもない製品だったので正直これを設置したいと言われた時は一瞬不安がよぎりました(笑)。
サッシのフレームも一般住宅用のサッシだったため、遮音性能はなかったのです。
しかし、リビングとバルコニーを隔てるもう一つの窓と、バルコニーまでの距離、近隣までの距離を計算した結果、音は距離によって減衰していきますから「これはいけるな!」という判断をしたのです。
ガラスの厚さとしては5㎜、色は完全な透明ではなくブロンズがかっています。とても品があり、部屋の雰囲気にぴったりですよね。
近隣へ影響がないよう遮音できており、おそらく隣家には全く影響はないかと思います。
このような新しい試みは私としてもありがたいのです。
なかなか得られない経験で、とても勉強になりました。
今までのリズムスターの施工ではこのような選択肢はなかったのですが、次からはガラス戸も条件によっては提案の中に取り入れていこうかなと思っています。
もともと谷村さんは、開放感のある長時間いても疲れない防音室を希望されていたので、ガラス戸はコンセプトにピッタリだと思います。
谷村さんにもこのようにご満足いただけて嬉しいですね!
防音室の設計・施工のことなら、リズムスターへお気軽にご相談ください!
リズムスターの防音室づくりでは、お客様との対話、そのプロセスを重視しています。
予算や条件面に関するヒアリングはもちろんのこと、どのような経緯で防音室をつくろうと思ったのか、どのような防音室を実現したいのかなど、お客様の“防音室にかける想い”を
尊重して防音室づくりをすすめていきます。
私たちがプロとしてできる提案はたくさんありますが、時には私たちが想定していなかったようなお客様からの提案も柔軟に受け止め、お客様と一緒に二人三脚で実現可能性を模索していきます。
今回はお客様からの提案でガラス戸の施工にチャレンジしてみましたが、結果としてこの物件の条件であれば問題がないことがわかり、デザイン性の高い素晴らしいグランドピアノ用防音室を実現することができました。
今後もさらに挑戦心や創造性を加えて、世界に一つしかない最高の防音室をお客様に提案していきます。
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